2018年12月22日土曜日

絵本大好き! 9


     💛 師走の風景と絵本『てぶくろ』

       早起きが苦手な私ですが、「ピピピピピッ!」という鳥の鳴き声
      に目覚めることがあります。そんなある日、「ピピピピピッ!」と
      いう鳴き声に誘われて外に出ると、隣の家の柿の木に群がっている
      スズメたちの姿がありました。枝に残されている柿の実をついばん
      でいるのです。無心についばんでいる姿が、何とも愛らしかったで
      す。

       「美味しそうに食べているけど、渋くないの?」と聞きたいと思
      いながら、しばらく眺めていました。食べ物が少なくなるこの季節
      に、群れでシェアしている姿にほっとしつつ、我が家のことを思い
      出しハッとしました。

       「今年は被害がなくてよかった!」と鳥侵入防止の網を取り付け
      た干し柿作りに満足していたことです。スズメたちが柿の実を一生
      懸命ついばむ姿を見て、何だか後ろめたい気持ちになり、「意地悪
      なことをしてごめんなさい!」とスズメに伝えたくなりました。

       シェアと言えば、…。
      この季節に必ずと言っていいほど、子どもたちに読んであげていた
      絵本『てぶくろ』を思い出します。
          
<ウクライナ民話>
エウゲーニー・M・ラチョフ え
うちだ りさこ やく 
福音館書店 刊

       雪が降るある日のこと。おじいさんが森を歩いていて、てぶくろ
      の片方を落として行ってしまいました。物語はここから始まってい
      くのですが、…。じつは、後からついていくこいぬがいたのです。

       すると ねずみが かけてきて、てぶくろに もぐりこんで 
       いいました。
       「ここで くらすことに するわ」

       そこへ かえるが ぴょんぴょん はねてきました。
       「だれ、てぶくろに すんでいるのは?」
       「くいしんぼうねずみ。あなたは?」
       「ぴょんぴょんがえるよ。わたしも いれて」
       「どうぞ」
       ほら、もう 二ひきに なりました。
       
       うさぎが はしってきました。
       「だれだい、てぶくろに すんでいるのは?」
       「くいしんぼうねずみと ぴょんぴょんがえる。あなたは?」
       「はやあしうさぎさ。ぼくも いれてよ」
       「どうぞ」

       もう これで 三びきに なりました。

               ー中略ー

        つぎつぎにやって来る、おしゃれぎつねに、はいいろおおかみに
       きばもちいのししとこのやりとりを繰り返し、狭くて窮屈ながらて
       ぶくろの中をシェアし合っている森の動物たち。

        最後にやって来たのが、のっそりぐまでした。
      
         


        「うおー うおー。わしも いれてくれ」
        「とんでもない。まんいんです」
        「いや、どうしても はいるよ」
        「しかたがない。でも、ほんの はじっこにしてくださいよ。」
        これで七ひきに なりました。てぶくろは いまにも 
        はじけそうです。

         そして、エンディング。

                         てぶくろが片方ないのに気がついたおじいさんは、探しに戻って
        きます。もちろんこいぬもいっしょです。

         「てぶくろは、むくむく うごいています。」 (文中)

         「わん、わん、わん」とこいぬがほえたてると、七ひきの動物
        たちはびっくりして、森のあちこちに逃げていきます。

         「そこへ おじいさんが やってきて てぶくろを ひろい
         ました。」とこの話は結ばれています。

          てぶくろの中に七ひきの動物が入る?大人は、「現実的には
         ありえない!」と思うでしょう。でも、子どもは違います。
         次々に登場するユーモラスな動物たちに感情移入し、ワクワク
         ドキドキしながらこの物語の世界にひきこまれています。この
         物語のてん末にかたづを飲み、楽しんでいます。子どもにとって
         身近で大好きなてぶくろにこんなドラマが生まれたら、きっと素
         敵ですね。

          担任をしていた頃、この時期に行われる発表会で、
         「てぶくろ」の劇遊びを楽しんだことが、今では楽しい思い出
         です。

          お預かりする赤ちゃんの中には、絵本がまだおもちゃの段階
         のお子さんもいます。そんなお子さんには押しつけたり、無理
         じいすることなく、子どもがやりたいようにあるがままの姿を
         受け止めつつ、1冊、また1冊と投げ出すたびに、「これは
         ○○だね」「これは△△だね」と、言葉(題名)を添えて伝え
         ています。

          そんな繰り返しの中で、お気に入りの1冊の絵本と出会って
         くれた時は、嬉しいですね。(笑)

          そんなこんなで3,4日費やしているうちに大変なことが
         起きてしまいました。隣の家の庭に職人さんが入り、冬囲い
         の作業が始まったのです。見ると、たくさんあった柿の実が
         1つ残らず落とされていました。スズメたちの落胆している
         様子が目に浮かぶようです。