2021年9月8日水曜日
絵本大好き
絵本が大好きな私としては、利用してくださるお子さんに豊かな絵本体験をして欲しいという思いがあります。
とは言え、お子さんがおもちゃ遊びに熱中している時に絵本に誘うことはしていません。ましてや、絵本に興味関心がないお子さんに無理強いすることは、やってはいけないことと心得ています。
魅力ある絵本やお話には、子どもを惹きつける力があると信じています。保育現場にいた時、そう確信させてくれる出来事を幾度となく体験しました。
ある日の保育での一コマです。
5歳児のクラスで、絵本「さっちゃんのまほうのて」を読んでいた時のことです。
「 たばた せいいち 先天性四肢障害児父母の会
●のべあきこ●しざわさよこ
共同制作
偕成社刊 」
※絵本「さっちゃんのまほうのて」の概略
先天性の四肢に障がいがあるさっちゃんという女の子が主人公のお話です。さっちゃんのお母さんのお腹にはあかちゃんがいて、もうすぐおねえさんになる予定です。幼稚園でのままごとあそびで、おかあさん(役)になりたいと思っているさっちゃんでした。そんなある日、クラスメートのまりちゃんにこんなことを言われたのです。
「さっちゃんは おかあさんには なれないよ!だって、てのないおかあさんなんて
へんだもん。」
傷ついたさっちゃんは、幼稚園をお休みします。
この出来事がきっかけとなりさっちゃんは、「てのない(ゆびのない)自分」と向き合うことになります。
「おかあさん、さちこのては どうして みんなと ちがうの? どうして みんなみたいに ゆびが ないの?どうしてなの?」「しょうがくせいに なったら、さっちゃんのゆび、みんなみたいに はえてくる?」とお母さんに尋ねます。
つらいことでしたが、おかあさんは おもいきって いいました。
「ずっと、いまのままよ。―(中略)―おかあさんのだいすきな さちこの かわいい かわいいて なんだから…。」
そんなさっちゃんに寄り添い、心を救ったお父さんの言葉があります。
「 ―(中略)— こうして さちこと てをつないで あるいていると、とってもふしぎなちからが さちこのてから やってきて、おとうさんのからだ いっぱいに なるんだ。さちこのては まるで まほうのてだね。」
以上
こんな奥の深い内容が、果たして目の前の子どもたちに伝わるだろうかと思いながらの読み聞かせでした。
普段はあまり絵本に興味を示さないH君が、いつになく真剣に話を聴いている姿が目に入りました。
話が佳境に入った頃。H君は、隣に座っていたM君(難聴児)の手を握りしめていたのです。普段は乱暴な言葉でM君をそしっているH君でしたが、この時のH君は違っていました。H君の中にある優しい一面を見たように思いました。この絵本から感じとられる深い愛情が、H君にも伝わったのだと思います。これが絵本の力だと私は思います。
「障がいのある友だちには、優しく接してあげようね。」と、教師目線で言わなくても、「子どもたちにはちゃんと伝わっている。」と、確信した一場面でした。
「こころほいく」は、短時間の預かり保育ですので、初めてのお子さんとの関わりがほとんどです。目の前のお子さんの姿に寄り添い関わることが最優先ですので、絵本体験が出来ないことの方が多いです。
それでも…。
豊かな言葉や丁寧な言葉使い、そして優しい語りかけを通して、子どもたちに伝えることができると信じています。一人ひとりを大切に、これからも子どもたちに寄り添い、丁寧な保育をすすめていきたいと思います。
先日、東京2020パラリンピック大会も無事終わりました。このコロナ禍の中にあって、始まるまではどうなるかと心配しましたが、どうにか無事終えてほっとしています。
パラアスリートたちの活躍する姿がそこにはありました。競技終了後、インタビューを受けるパラアスリートの多くの方々が共通して語っていたのは、「ここまで支えてくださった人たちへの感謝の言葉」でした。
喜びや悔しさ、ここに至るまでの様々な思いやドラマがあったことと思います。その姿や涙にたくさんの感動と勇気をいただきました。
さて私はと言えば…。
おかげさまで、「こころほいく」を開設させていただいて丸4年が経ち、この9月で5年目を迎えることができました。利用してくださった親子さん、支えてくださった皆さまのおかげあってのことです。まさに感謝、感謝です。
本当にありがとうございます。
コロナ禍にあって、自粛生活はもうしばらく続くのかもしれませんが、出口はきっとあるはずです。その日がきっと来ることを信じ、もう少し続けさせていただきたいと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。