2023年3月17日金曜日

巣立ちの時

 

桜の開花が聞かれるこの頃。

暖かな日差しに誘われて、久しぶりに庭に出てみた先日のことです。

 

花壇は、一面枯葉が敷きつめられていて、この光景は冬の間ずっと気になっていたことでした。役目を終えた枯葉は思いのほか軽く、面白いほどに簡単に取り除くことが出来ました。

すると、この時を待ちわびていたかのように、新しい芽たちが顔を出していたのです。「枯葉のお布団は重かったよね」と、心の中でつぶやきながら作業しました。

 

中には、枯葉を突き破って顔を出している芽がありました。大興奮!!です。

「ちょっと、見て!」と、夫を呼びました。その生命の力強さに感動しました。

 

この時、二日前に利用してくださったSさんとKくんのことを思い浮かべました。

初めてお預かりさせていただいたのは、Kくんが2か月の頃でしたので、かれこれ1年数か月のお付き合いになります。利用の間隔が、1か月、あるいはそれ以上空くこともあるので、お母さんとの離れ際はKくんの目から涙が出るのは当たり前のことでした。

ところがこの日、2歳の女児Yちゃんと一緒のお預かりになりました。

いつもと違う光景にあっけに取られた表情のKくん。泣きかけて顔が緩んだ瞬間、表情に変化が見られたのです。「お友だちがいるのに、泣いてなんかいられないぞ!」と言わんばかりのKくんの表情が、とても頼もしく感じられました。

と同時に、友だちの力の大きさを感じた瞬間でもありました。

ティッシュペーパーで涙をふいてやろうとしているYちゃんの優しいおねえちゃん振りの姿も見ることができました。なんとも微笑ましい光景ですね。

 

お母さんのお話によると、4月からの入園が決まったとのことです。予定していた育児休暇を延長しながら、ようやく決まった入園です。お母さんの気持ちを察するに余りあるものがあります。

 

一つの遊びをじっくり遊びこむ姿や、一人遊びする姿も見られるようになったこの日、まさに、「機が熟す」という言葉がぴったりのKくんの姿がありました。

「泣くこと」を吹っ切ることができたKくんの顔は、晴れやかな笑顔であふれていました。

 

「こころほいく」には入園や卒園の節目はありませんが、お子さんたちが入園される時が、「こころほいく」を卒園する日だと思っています。

寂しくないと言ったら嘘になりますが、お子さんたちが笑顔でここで過ごしてくれること、

Kくんのように継続的に利用してくださったお子さんが、会う毎に成長していく姿を見守れる、この喜びは一塩です。

 

花壇の枯葉のごとく、新芽の成長を下支えする役目をもう少しだけ続けさせていただこうと思うこの頃です。

 

巣立ちの時ですね。

(こすずめの)巣立ちの時の冒険を見守り、応援するお母さん(すずめ)の深い愛情が伝わってきて、ほっこりする絵本「こすずめのぼうけん」を贈りたいと思います。



ルース・エインワース作
石井桃子訳 堀内誠一画
福音館書店刊
大好きな絵本のベスト3の1冊です!


お母さんの優しい愛情に触れると、保育士生活何十年経ても胸が熱くなります。

子育てを頑張っていらっしゃるお母さんにエールを送る気持ちで、読ませていただいております。

 

2023年3月2日木曜日

3月雛の月

 

日々寒暖の差はありますが、日差しに柔らかさを感じるこの頃です。

そして、3月雛の月を迎えました。

 

先月のことになりますが、連続6日間同じお子さん(2歳2か月のR君です)をお預かりする機会をいただきました。

 

おばあちゃんっ子のR君は、「ばぁばっ!」を連呼し涙の別れになりました。初めての環境「こころほいく」で過ごす時間は、R君にとっての初体験であり、試練のように思いました。

 

泣くのは、当たり前です。

「ばぁばっ!ばぁばー!」と訴えるR君に対して、「おばあちゃんが大好きなんだよね。ばぁばに会いたいね。(悲しい時は、)いっぱい泣いていいよ。」と、R君の泣きたい気持ちに最大限寄り添いながら、知っている限りのうたを歌ってみました。「R君は歌が大好き!」という情報があったからです。

 

「コンコンクシャンのうた」をうたい始めた時です。

「♪ぶうちゃんが マスクした まるい まるい まるい まるい~♫ 」の歌詞に反応したR君が、笑ってくれました。

さすがに2歳のR君。一生懸命に泣きながらも、関わっている私の言葉や歌に耳を傾け、聴く力がしっかり育っていたのです。

 

感動です!「今だ!」と思いました。

遊びに誘うタイミングがやってきました。出来れば楽しく過ごして欲しいからです。

 

後方は 「トレインカースロープ」 ベック社製
R君は、特に「きいろ!」が大好きでした。
真ん中 「ずかん・じどうしゃ」 山本忠敬 さく/福音館書店刊
40歳になった息子も愛読した絵本ですが、現在は二代目です。
前方 「いらっしゃい」 せなけいこ さく
お店屋さんの歌遊びで楽しみました。

 

R君は車が大好き!」という情報があったことも幸いでした。

「ずかん・じうどうしゃ」のページをめくるたびに描かれている車を指さし、「タンクローリー!」「コンクリートミキサーしゃ!」「ゆうびんしゃ!」と言い当てるR君の表情は、嬉々としていました。


 「すごいね!よく知っているね。」を連発すると、R君は得意顔に変わりました。

 

そこで、「はたらくくるま」の歌とのコラボすることとなりました。

歌詞も音程もしっかりしていて、語彙数が急に増える頃の2歳さんそのものだと思いました。またまた感動です。

 

    

二日目のR君の涙の時間は30分に短縮され、日々更新していくこととなりました。すっかり慣れてきたR君の姿に変化が見られるようになりました。車のおもちゃを投げながら私たちおばさん、おじさんの反応をうかがうようになりました。

「大好きな車を投げないでね。車さんが痛いって言っているよ。」と、禁止句を使わないように努めました。「ダメ!」と言うと、なおもやり続けて「投げる」ことを面白がる遊びにしないためです。

疲れてきて物に当たりたくなる気持ちは、分かりますね。

 

R君なりに頑張っている姿を見ていたら、「叱る」なんてとんでもないことで、むしろ「偉かったね!頑張ってね!」とたくさん褒めてやりたいと思いました。

 「おじちゃん!おばちゃん!」と呼ばれる関係の中に、信頼関係が生まれてきたと感ずる頃、最終日を迎えることとなりました。六日目の涙は、瞬く間の出来事でした。

 

こうして

車のおもちゃと絵本とそして歌に助けられて、6日間を無事終えることが出来ました。

保護者の方のお手伝いが少しでも出来たなら、こんなに嬉しいことはありません。

 

明日は、ひな祭り。

そもそもひな祭りは女の子の健やかな成長を願う行事ですが、性別は関係なくして、この度ご縁をいただいたR君をはじめ子どもたちの健やかな成長と幸せを願う日として、おじさんと共にお祝いしたいと思います。

 

玄関ギャラリーのお雛様たち
菱餅のとなりは、ミニうさぎのお雛さま
弥彦のガラス工房で今年求めたニューフェイスです